最終更新日 2025年3月7日 by ineyard
ファッション雑誌の編集部に在籍していた頃、最も気を配ったプロセスがモデル選びでした。
モデルはブランドの“顔”であり、ビジュアルとしての存在感だけでなく、その人が放つ雰囲気や背景までもがブランドイメージに大きく影響します。
実際、オーディションでの立ち居振る舞いが魅力的だったモデルを起用したことで、新規顧客の獲得やSNSでのバズにつながったケースも何度も目にしてきました。
本記事では、そんなモデルキャスティングの基礎知識を整理しながら、初心者でも理解しやすい実践的なポイントを紹介します。
これからファッション業界に飛び込もうとしている方や、自社ブランドの宣伝でモデルを起用したいと考えている方にも役立つヒントが満載です。
「モデルの個性をどうやってブランドに合わせるのか?」といった疑問に加え、最新のキャスティング動向も踏まえて解説していくので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
モデルキャスティングの基本理解
ブランドコンセプトとモデルの個性
モデルを選ぶとき、外見の美しさやスタイルばかりに注目しがちですが、実は最も重要なのはブランドのコンセプトとの“調和”です。
たとえば、エシカルやサステナブルを掲げるブランドなら、環境活動に熱心なモデルや、自然体の雰囲気を持つ人材を起用することで、より説得力のあるビジュアルを生み出せます。
- ブランドの世界観と共鳴する価値観
ブランドが大事にしているテーマ(例:多様性、エコロジー、ストリートカルチャーなど)をモデル自身が体現しているかどうかをチェックします。 - 外見+αの魅力
ルックスはもちろんですが、内面やバックグラウンドにブランドとの共通点があるかは非常に大切な要素です。
「こんなストーリーを持ったモデルなら、ブランドの世界観をもっと深く伝えられる」という視点を持つと、キャスティングの質がぐっと上がります。
雑誌・ショー・広告におけるキャスティングの違い
ファッションメディアや広告でのモデル選びは、それぞれ求められる要素が微妙に異なります。
同じモデルを起用する場合でも、媒体によって印象が変わるのが面白いところです。
- 雑誌
- 読者の視線を引きつけるポージングや表情が求められます。
- 連載企画や特集ページなど、長期的・連続的にモデルを登場させる場合も多く、読者に覚えてもらいやすい個性が重視されることがしばしば。
- ファッションショー
- ウォーキングのスキルやステージ映えするオーラが重要です。
- ステージ上での照明や音響の演出を最大限に引き出すには、動きの柔軟性やプロフェッショナルな度胸が求められます。
- 広告(オンライン・オフライン)
- 画像や映像として切り取られたときにインパクトを出せるモデルが好まれます。
- ブランドが掲げるメッセージを直接代弁する場面が多いため、SNSフォロワー数や発信力など“拡散力”も評価基準の一つになります。
選定プロセスの実践ステップ
オーディションからフィッティングまでの流れ
モデルキャスティングは、一般的に以下のようなステップで進行します。
それぞれの段階で重要となる観点が異なるので、しっかり把握しておきましょう。
- 書類選考
- まずはプロフィール写真やポートフォリオ、SNSリンクなどで大まかなイメージを把握します。
- ここでは身長やサイズなど客観的なデータに加え、本人が発信しているアートや表現に目を向けるのもおすすめです。
- 実技審査(オーディション)
- ウォーキングやポージングを直接確認します。
- クリエイティブディレクターやスタイリストの前での適応力や、コミュニケーション能力も評価ポイント。
- フィッティング
- 衣装合わせやメイクのテストで、ブランドコンセプトとの相性を細部までチェックします。
- 実際に着用したときのシルエットや表情がイメージに合うかどうかを見極める場面です。
- 最終決定
- すべての要素を総合的に検討し、「このモデルならブランドのメッセージを最大限に引き立てられる」という確信を得たら契約へ。
SNSを活用した情報収集とリサーチ
近年はSNS経由で起用されるモデルも増えています。
InstagramやTikTokなどで存在感を放つインフルエンサーは、従来の芸能事務所所属モデルとは異なる独自のファンコミュニティを持っていることが多いです。
- 新進モデルの発掘
「#モデル募集」「#オーディション」などのハッシュタグや海外ファッションショー関連の投稿を頻繁にチェックすることで、新しい才能を見つけられます。 - 海外の最新事例に学ぶ
パリやミラノなど主要コレクションのキャスティング情報は、SNSを通じてリアルタイムで共有されています。
オンラインで事例を吸収することで、国内でも取り入れられる先進的な施策をいち早くキャッチしましょう。
モデルキャスティングを成功させるコツ
多様性とブランドイメージの相乗効果
今や多様性(ダイバーシティ)を意識したモデルキャスティングは、ファッション界のトレンドを越えて“必須要素”になりつつあります。
人種・性別・体型など様々なバックグラウンドを持つモデルを起用することで、ブランドの器が広がり、より多くの消費者に共感を呼びやすくなります。
「多様性を取り入れることでブランドのメッセージが普遍化し、より豊かな表現が実現する。」
上記のような考えをもとに、以下の点を意識するとよいでしょう。
- ブランドの“根幹”と矛盾しないかを確認する
何でもかんでも多様性を打ち出せばいいわけではありません。
あくまでブランドが掲げる世界観やコンセプトと整合性が取れる形で多様性を組み込むことがポイントです。 - チーム全体の意識づけ
単にモデルだけでなく、スタイリストやヘアメイク、広告代理店など、関わる人々が多様性の意義を理解していると、現場でのコミュニケーションがスムーズになり、最終的なビジュアルにも説得力が出ます。
“ストーリー”を意識した人材選び
キャスティングは「見た目」だけで終わらせるにはもったいない要素がたくさん詰まっています。
特にブランドとモデルの“物語”を掛け合わせたときに、より強いインパクトや感動を生むのがファッションの醍醐味です。
- モデルのバックグラウンドをブランドのストーリーにリンクさせる
たとえば、環境保護に熱心なモデルのライフスタイルを掘り下げ、その姿勢がエコ意識の強いブランドといかに呼応しているかを広告や記事で紹介します。 - 読者・消費者との共感を生む
「このモデルがいるからブランドのファンになった」と思ってもらえるよう、モデル自身の言葉や生き方をメディア発信の一部に組み込む工夫が重要です。
トレンドを踏まえたキャスティング戦略
海外コレクションから読み解く最新動向
海外のランウェイを見れば、そのシーズンのキャスティング傾向が一目瞭然です。
例えば、ニューヨークコレクションではSNS世代の若者を多く起用し、会場とライブ配信を連動させるブランドが増えています。
一方、パリではクラシカルな美意識と多文化背景をあわせ持つモデルが注目を集めるなど、都市ごとのカラーが表れるのも興味深いポイントです。
都市 | キャスティング傾向 | 特色 |
---|---|---|
ニューヨーク | SNSフォロワー数やデジタル発信力を重視 | 若手インフルエンサーの台頭 |
パリ | クラシカルな美意識+多文化背景のモデル | 歴史と革新の融合 |
ミラノ | ボディポジティブや多様性の強調 | 伝統的なエレガンスとの掛け合わせ |
ロンドン | アバンギャルドかつ個性重視 | サブカルチャーとの融合 |
これらの情報を参考に、国内のブランドもどのように世界の潮流を取り入れるかを考えるのが一つの戦略となります。
ただし、むやみに海外を真似るのではなく、自社のブランドアイデンティティと紐づける視点が大切です。
今後のキャスティングが進む方向性
テクノロジーの進歩とともに、モデルキャスティングも新たな形に変わりつつあります。
リモートでのオーディションやVRを活用したフィッティングシミュレーションが普及し、物理的な制約が少なくなることで、世界中の才能が一挙に集まりやすくなっています。
- オンラインオーディションの普及
移動費や会場コストを削減できるだけでなく、世界各地のモデルが“バーチャル参加”しやすくなるメリットがあります。 - サステナビリティとの連動
デジタルツールによる効率化が進めば、余剰生産や移動に伴う環境負荷を低減することも可能です。
モデル自身も環境や社会問題への意識が高ければ、キャスティングを通じてブランドの姿勢を強く打ち出せます。
まとめ
モデルキャスティングは、単なる“人材探し”ではなく、ブランドイメージを最高の形で表現するための重要なクリエイティブ作業です。
ブランドの世界観を体現するモデルを選ぶことで、企業が発信したいメッセージや魅力がより深く、そして強く届くようになります。
多様性を取り入れることで新たな消費者層とつながり、SNSを通じた発信力を強化することでグローバルな認知度も高まるでしょう。
その一方で、単にトレンドを追うのではなく、自社の持つ物語や価値観と合致するかどうかをしっかり吟味する姿勢が必要です。
テクノロジーの力を借りながら、柔軟にキャスティングプロセスをアップデートし続けることで、これからのファッションシーンにふさわしい多様な可能性が開花するはずです。
モデルキャスティングに正解はありませんが、丁寧にリサーチし、ブランドとモデルの両者が充実感を得られる関係を築くことが理想。
ぜひ今回の記事を参考にしながら、あなたのブランドが放つ世界観を最大限に引き立てる“一期一会”のモデル選びを楽しんでいただければと思います。