最終更新日 2025年12月22日 by ineyard
「政治は自分たちの生活とは遠い世界の話だ」
「誰が議員になっても、社会は変わらない」
そう感じている方も少なくないかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか?
私たちの暮らしに直結する政策や法律は、すべて国会や地方議会で決められています。
その意思決定の場に、人口の約半分を占める女性の代表が極端に少ないという現実が、今の日本にはあります。
この記事では、なぜ今、女性議員を増やすことが重要なのか、そして、私たち一人ひとりが女性議員を応援するために何ができるのかを、具体的なデータとアクションプランと共にお伝えします。
あなたの一票、そして日々の小さな行動が、より公平で多様性に富んだ社会を実現するための大きな力になるのです。
目次
日本の政治におけるジェンダーギャップの現状
まず、日本の政治がいかに「男性中心」であるか、その現状を直視することから始めましょう。
データは、日本の政治分野における深刻なジェンダーギャップを浮き彫りにしています。
世界から大きく遅れる日本の女性議員比率
世界経済フォーラムが毎年発表する「ジェンダー・ギャップ指数」の2025年版によると、日本の総合順位は146カ国中118位と、依然として低い水準にあります。
特に深刻なのが「政治」分野で、その順位は125位にまで後退しています。
これは、2024年10月に発足した石破茂内閣の女性閣僚がわずか2人(10%)となり、それ以前の5人(25%)から大幅に減少したことなどが影響しています。
国会に目を向けても、状況は芳しくありません。
2024年10月の衆議院総選挙の結果、女性議員の比率は過去最高の15.7%となりましたが、それでも世界平均(26.1%)や、政府が目標とする「2025年までに35%」には遠く及ばないのが現実です。
地方議会にいたっては、女性議員が一人もいない「女性ゼロ議会」が、全国の市町村議会のうち約2割も存在します。
なぜ日本の女性議員は増えないのか?立ちはだかる「壁」
では、なぜ日本では女性議員がなかなか増えないのでしょうか。
そこには、複合的で根深い「壁」が存在します。
- 構造的な壁
- 政治は男性のものという固定的観念: 読売新聞社と早稲田大学が実施した共同世論調査によると、女性議員が少ない原因として最も多くの人が挙げたのが「社会に『政治は男性のもの』という意識があるから」(57%)でした。
- 家庭との両立の困難: 「女性が家庭で担う役割が大きいから」という回答も多く、家事や育児の負担が女性の政治参加を阻む大きな要因となっています。
- 資金や人脈の不足: 選挙に出馬するには多額の資金と、支援者を集めるための人脈が不可欠ですが、これらは男性が優位な傾向にあります。
- 制度的な壁
- ハラスメントの横行: 議員間や有権者からのセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントが深刻な問題となっています。内閣府の調査では、女性地方議員の6割近くが有権者や他の議員からハラスメントを受けたと回答しています。 このような環境が、女性が立候補をためらう一因となっています。
- 男性中心の選挙文化: 深夜まで続く会合や、飲酒を伴うコミュニケーションなど、旧来の選挙文化が女性の参加を困難にしています。
これらの「壁」は、女性が政治家というキャリアを選択することを躊躇させ、結果として政治分野におけるジェンダーギャップを固定化させているのです。
女性議員が増えると、社会はどう変わるのか?
女性議員を増やすことは、単に男女の数を均等にするという「平等」のためだけではありません。
それは、社会全体に計り知れないメリットをもたらす「投資」でもあるのです。
政策決定の多様化:暮らしに身近な課題が政治の議題に
議会に多様な背景を持つ人々がいることで、議論は豊かになり、より多くの国民の声を反映した政策が生まれます。
女性議員が増えることで、これまで政治の場で十分に議論されてこなかった、あるいは見過ごされてきた課題が光を浴びるようになります。
例えば、子育て支援、介護問題、男女間の賃金格差、性暴力被害者の支援、女性特有の健康問題など、女性が日々の暮らしの中で直面する課題は多岐にわたります。女性議員は、自身の経験に基づき、これらの課題を「自分ごと」として捉え、具体的な政策立案につなげる力を持っています。
実際に、海外の研究では、女性議員の割合が増えると、保育サービスの支援が拡大したり、医療や教育への支出が増加したりする傾向があることが示されています。
将来世代へのポジティブな影響:ロールモデルの存在
政治の場で活躍する女性の姿は、次世代の子どもたち、特に女の子たちに大きな希望とインスピレーションを与えます。
「女性も総理大臣になれる」「女の子も政治家を目指していいんだ」という意識が社会に広がることは、子どもたちの将来の選択肢を広げ、ジェンダー平等な社会の実現に向けた大きな一歩となります。
女性議員が少ない原因の一つとして「手本となる女性議員が少ないから」という点が指摘されていることからも、ロールモデルの存在がいかに重要かがわかります。
例えば、元参議院議員であり、現在は教育者として活躍する畑恵氏の経歴は、政治の世界で培った経験を次世代育成に活かすキャリアパスの一例として、多くの女性にとっての指標となるでしょう。畑恵氏のような多様なキャリアを持つロールモデルが増えることは、社会全体にとって大きな財産です。
経済への好影響と社会全体のレジリエンス向上
女性の政治参加は、経済にもプラスの影響を与えることが分かっています。
女性議員が増えることで、女性の労働参加を促す政策や、男女間の賃金格差を是正する法律が整備されやすくなります。
これにより、労働市場全体の活性化や、新たなイノベーションの創出が期待できるのです。
また、多様な視点を持つ意思決定層は、社会が予期せぬ危機に直面した際の対応力、すなわち「レジリエンス(困難をしなやかに乗り越え回復する力)」を高めると言われています。
私たちにできること①:選挙で女性候補者を応援する
では、具体的に私たちは何をすればよいのでしょうか。
最も直接的でパワフルな方法が、選挙を通じて女性候補者を応援することです。
「一票」を投じる:最も直接的な応援方法
言うまでもなく、選挙で投票することは、私たちに与えられた最も重要な権利であり、最も直接的な応援方法です。
候補者の政策や理念をよく吟味し、共感できる女性候補者にあなたの大切な一票を投じましょう。
「自分の一票くらいで何も変わらない」と思うかもしれません。
しかし、過去の選挙では、わずか1票未満の差で当落が分かれた例も実際にあります。
あなたの一票が、議会の景色を変える最初の一歩になるのです。
選挙ボランティアに参加する:候補者の「手足」となる
選挙には、膨大なマンパワーが必要です。
もし、応援したい女性候補者が見つかったら、選挙ボランティアとして活動に参加してみませんか?
候補者の「手足」となり、選挙運動を支える貴重な戦力になることができます。
| ボランティア活動の例 | 内容 |
|---|---|
| 事務所での作業 | 電話かけ、ポスターやビラの準備、データ入力など |
| 街頭での活動 | ビラ配り、ポスター貼り、街頭演説のサポートなど |
| SNSでの発信 | 候補者の活動報告のシェア、応援メッセージの投稿など |
| ポスティング | 住宅のポストにビラを投函する作業 |
特別なスキルは必要ありません。
「何か手伝いたい」という気持ちがあれば、誰でも参加できます。
多くの候補者事務所では、ボランティアを随時募集しています。
候補者のウェブサイトやSNSをチェックしたり、選挙事務所に直接問い合わせてみましょう。
一般社団法人Stand by Womenなどが作成している「選挙ボランティアのしおり」なども参考になります。
寄付(献金)をする:活動の「原動力」を支える
選挙運動には、事務所の家賃、人件費、印刷代など、多額の費用がかかります。
特に、新人や地盤のない女性候補者にとって、資金集めは大きな課題です。
個人からの寄付(政治献金)は、候補者の活動を支えるための貴重な「原動力」となります。
寄付は、数百円、数千円といった少額からでも可能です。
多くの候補者は、ウェブサイトで寄付の方法を案内しています。
また、「わたしたちのバトン基金」のように、ジェンダー政策に取り組む女性候補者を資金面で支援することを目的とした基金も設立されています。
時間的にボランティアに参加するのが難しい方でも、寄付という形で力になることができます。
私たちにできること②:日常の中で女性の政治参加を後押しする
選挙期間中だけでなく、普段の生活の中でも、女性の政治参加を応援するためにできることはたくさんあります。
SNSで情報をシェア・発信する:世論を喚起する
SNSは、個人の声を社会に届け、世論を形成するための強力なツールです。
- 応援したい女性議員や候補者の活動をシェアする
- 政治分野のジェンダーギャップに関するニュースや記事に意見を添えて投稿する
- 「#女性議員を増やそう」「#投票以外にできること」などのハッシュタグを使って発信する
あなたの投稿が、友人の関心を喚起し、社会全体の意識を変えるきっかけになるかもしれません。
まずは、信頼できる情報源から得た情報を、自分の言葉で発信することから始めてみましょう。
地域の勉強会やイベントに参加する:知識を深め、仲間と繋がる
政治やジェンダーに関する知識を深めることも、重要なアクションの一つです。
多くのNPOや市民団体が、女性の政治参加をテーマにした勉強会やシンポジウムをオンライン・オフラインで開催しています。
こうした場に参加することで、最新の情報を得られるだけでなく、同じ志を持つ仲間と出会い、ネットワークを広げることができます。
一人では難しいことも、仲間と繋がることで、より大きな力に変えていくことができるでしょう。
女性候補者を支援する団体をサポートする
日本には、女性の政治参加を支援するために活動している超党派の団体が複数存在します。
これらの団体は、候補者の育成や、選挙のノウハウ提供、ネットワーク作りなど、多岐にわたるサポートを行っています。
主な支援団体
- 一般財団法人 WIN WIN: 一人でも多くの女性を政治の場に送ることを目指す超党派のネットワーク。
- FIFTYS PROJECT: 20代・30代の若い世代の女性やノンバイナリー、Xジェンダーの地方議員を増やすことを目指す団体。
- 一般社団法人 Stand by Women: 女性議員や候補者が安心して政治に関わることができる社会を目指し、ハラスメント対策や選挙ボランティアの支援などを行う。
これらの団体の活動に賛同し、会員になったり、寄付をしたり、イベントに参加したりすることも、女性議員を増やすための力強い後押しになります。
世界の潮流から学ぶ:女性議員を増やすための取り組み
世界では、女性議員の割合を増やすために、様々な制度的な取り組みが行われています。
その代表例が「クオータ制」と「パリテ法」です。
クオータ制とパリテ法:政治の景色を変えた制度
クオータ制とは、議員候補者や議席の一定割合を女性に割り当てる制度のことです。
ノルウェーや台湾など、多くの国で導入されており、女性議員の割合を飛躍的に向上させる効果が報告されています。 例えば、インドではクオータ制導入後、地方議会の女性議員比率が5%未満から40%台にまで増加しました。
パリテ法は、フランスで導入されている法律で、選挙の候補者を男女同数にすることを政党に義務付けるものです。 違反した政党には、政党助成金を減額するといった罰則も設けられています。 この法律の導入により、フランスの国民議会(下院)の女性議員比率は、過去20年間で4倍近くまで向上しました。
日本では、2018年に「政治分野における男女共同参画推進法」(通称:候補者男女均等法)が施行されました。 この法律は、政党に対し、男女の候補者数をできる限り均等にすることを目指すよう「努力義務」を課すものですが、罰則規定はなく、その実効性が課題となっています。
世界の成功事例に学び、より実効性のある制度を日本でも導入していくことが、政治分野のジェンダーギャップ解消を加速させる鍵となります。
まとめ:あなたの一歩が、未来の社会を創る
日本の政治における深刻なジェンダーギャップ。
それは、社会の公正さだけの問題ではなく、私たちの暮らしの質、そして未来の社会のあり方そのものに関わる重要な課題です。
女性議員が増えることで、政策はより多様な民意を反映し、社会はより強靭になります。
この記事で紹介したように、私たち一人ひとりができることは、決して少なくありません。
選挙で一票を投じること。
ボランティアや寄付で候補者を支えること。
SNSで声を上げ、学び、仲間と繋がるこ
と。
その一つひとつの小さなアクションが、やがて大きなうねりとなり、政治の景色を変えていきます。
あなたの一歩が、誰もが生きやすい、公平で豊かな社会を創るための、確かな力になるのです。
さあ、一緒に行動を始めましょう。